あらすじ
世界の危機より、床の泥汚れの方が大問題。
王都の外れにある、小上がりスタイルの小さな喫茶店。
店主の女性は、遠い昔に旅に出たまま戻らない夫との『約束の場所』であるこの店で、ただ静かで穏やかな日常を営んでいた。
ところがある日、けたたましい音と共に店のドアが吹き飛び、泥だらけの若者たちが転がり込んでくる。
彼らはなんと、数千年ぶりに復活したという魔王を討つ使命を帯びた『勇者』と『聖女』だった。
壮大な使命や、迫り来る世界の危機を悲壮な面持ちで熱弁する勇者たち。
しかし、店主にとってそんなことは心底どうでもよかった。
彼女にとって一番の危機は、『土足厳禁の小上がりを泥だらけのブーツで踏み躙られたこと』であり、『ドアをブチ破られた』ことなのだから。
圧倒的なマイペースさで、世界を救うはずの英雄たちを『ただの客』へと成り下がらせる店主。
だが、魔王復活の余波は、ついに彼女の愛する平穏な喫茶店にも及ぼうとしていて……。
果たして彼女は、次々と押し寄せるファンタジーの理不尽から、夫の大切な『店』を守り抜くことができるのか?
――これは、壮大な運命をガン無視して喫茶店を営む、とある女店主の静かで、少しだけ容赦のない物語。