あらすじ
「君には心がない」——華やかな舞踏会で、第一王子エドワードから婚約破棄を宣言されたリリアーナ。氷の侯爵令嬢と蔑まれる彼女だが、その胸中にあったのは絶望ではなく、三年ぶりの解放感だった。
リリアーナには秘密がある。母から受け継いだ香水瓶に宿る特別な力——香りで人の記憶を操る能力。彼女はその力で、愚かな婚約者の数々の醜聞を貴族たちの記憶から消し去り、王家の体面を守り続けてきたのだ。
賄賂、横領、外交上の失言。全ては消えたのではなく、彼女が「預かっていた」だけ。
婚約破棄という名の解雇通知を受け取った今、返却の時間がやってきた。
「一週間後、この広間にいる全員が後悔することになる」
静かに微笑むリリアーナの前に現れたのは、「北の狼」と畏怖される辺境伯ルシアン。彼だけが、香水瓶の真の価値を知っているという。
冷徹な仮面の下に隠された想いと、全てを見抜く紺碧の瞳。二人の出会いが、王国の運命を大きく変えていく——。
愚かな王子への華麗なる復讐劇と、不器用な愛の物語。香りは嘘をつかない。だから記憶もまた、永遠に。