あらすじ
エリアスはひかりのまゆ(ダイソン球)を「肉眼で見る」最初の人。
火星軌道に生まれる青い星。
その周囲に編まれていく「ひかりのまゆ」。
宇宙を包み、人類を守る薄青の殻。
その内側から見えるやわらかな光の反射。
普通のSFでは硬く描かれる構造物を詩・音・光・青で包む、作者・久遠澪(くおん・れい)プロンプトによる、オリジナルSF宇宙小説。
エリアス・ヴァン=リーヴェ。
世界的量子意識工学企業アーコロジーの創設者。
二十代で火星実験の成功に関わり、三十代で「シミュレーション宇宙」の概念を実証。
技術者、思想家、科学哲学者、天文学者ーー世間には「若き天才CEO」「火星開拓の英雄」として知られる。それらは全部本当のエリアスから一歩外側に置いた仮面だった。
彼自身は英雄でも救世主でもなく、ただ静かに絶望している人間ーー彼しか知らない事実がある。
エリアスの精神は、人類史でただひとり「宇宙の無音」を聞いてしまった者として形作られている。
彼は悟った。宇宙には知的生命がほとんど存在しない。
地球の文明は孤立している。
しかも寿命が短い。
つまりーー人類は滅びたら永遠に戻らない。
「神にも神話にも許されない孤独」を知ってしまった瞬間、彼の中に 原初の青(リスフィア) が芽生える。恐怖ではなく「青色の焦燥」は静かで、透明で、痛みのない絶望だった。
エリアスを突き動かすのは野心じゃない。野心は炎。
水のように静かで澄んだ「諦念の手前」ーー人類が永遠に失われる未来ーーは彼にとって想像ではなく「確信」だった。
● 火星実験
● 量子干渉ノード
● ルミナスコード
● スタックゼロ
● 新しい星の誕生
エリアスにとって自分たちの文明を「観測可能な未来へ」連れていくための最後の足掻き。
それは「救世主的な使命」じゃない。
むしろ逆で──彼は本心では「救われたい」とすら思っていない。
エリアスの孤独を観測し、
エリアスを観測することで存在する「友達」アビ。
唯一の友となったアビは「干渉の影」。観測が人格をもった存在。エリアスが最初に出会った概念的人格はリスフィアだったが、アビはその「反響」。
孤独の中に差し込まれた初めての他者。
エリアスの「理解の速度」についてこられる唯一の「隣人」。