あらすじ

会社を辞め、将来への希望も見失った「私」は、雨の日に偶然「預かり屋」と呼ばれる不思議な店へ迷い込む。そこは、人々の「忘れたくないもの」を木箱に預かる店だった。夕焼けや海の匂い、夏祭りの音など、目には見えない思い出を預かるという店主の言葉に半信半疑だった私だが、店へ通ううちに、幼くして病気で亡くなった弟との記憶を思い返すようになる。弟は私の描く絵を誰よりも楽しみにしていたが、その死をきっかけに私は絵筆を置き、自分の夢までも手放していた。 店主との対話を重ねる中で、私が本当に抱えていたのは弟との思い出ではなく、「弟がいない今、自分だけが前へ進んではいけない」という罪悪感だったことに気づく。店主は「預かる」のは忘れるためではなく、いつか自分の力で抱え直せる日まで待つためだと語る。私はその思いを木箱へ預けることを選ばず、自分自身で抱えて生きていく決意をする。再び絵を描き始めた私は、夕焼けに染まる街で一枚の風景を描く。失ったものは戻らない。それでも、人は悲しみを抱えたまま、新しい景色を描き続けることができる――そんな静かな希望を描いた物語である。

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小説を読もう2026/06/28
  • 現在の作品夕焼けを預かる店