あらすじ
王太子から婚約破棄を告げられ、ルシュフォード家が王家に貸していた幸運を回収した伯爵令嬢ルディア・ルシュフォードは、隣国ヴァルシュタイン公国の契約庁で働き始めていた。
ある朝、黒革の手帳に奇妙な名前が浮かぶ。
マルコ・ハント。晴天時に発熱。
パン屋の少年マルコは、雨の日も朝早くから火を入れ、近所の老人に焼きたてのパンを分けるような子だった。けれど王宮の祝福式が近づくたび、晴れの日に限って倒れてしまう。
調べていくと、クラウディア王宮の祝福式を成功させるために、町の人々が積んだ小さな幸運が少しずつ吸い上げられていた。祈りでも奇跡でもない。誰かの毎日の努力を、貴族が祝福の名で盗んでいただけだった。
「幸運は、奪って使うものではありません。返却条件のない貸与は、ただの横領です」
ルディアは黒革の手帳を開き、盗まれた幸運を持ち主へ返す。