あらすじ
三倉文乃(みくら あやの)、二十六歳。
かつて小説家を目指していた彼女は、精神的不調によって本を読むことも、小説を書くこともできなくなっていた。
そんな文乃のもとへ、担当ケースワーカーの佐伯直人(さえき けんと)が一つの原稿を持ってくる。
朝は朝だった。
健太は朝を見て、今日も朝が来たのだなと思った。
あまりの文章事故に、文乃は思わず赤ペンを握る。
「朝が朝であることは、読者もだいたい知っています」
「これは冒頭ではなく、朝の出欠確認です」
読めないはずの彼女は、佐伯の壊滅的な原稿だけはなぜか読めてしまった。
それは回復ではない。緊急対応だった。
やがて二人はWeb小説投稿を始める。
コメント欄に現れる誤字脱字警察、AIで急に整う佐伯の文章、新人賞への挑戦、そして「誰がその一文を引き受けるのか」という創作責任。
本が読めない小説家志望と、文章力ゼロのケースワーカー。
不器用な二人が、読者と赤ペンと下手すぎる原稿に支えられながら、もう一度物語に手を伸ばしていく。
これは、完璧な人間だけが物語を作るわけではないと知っていく、創作再生コメディ。