あらすじ

小学五年生の春香は、幼い頃から続けてきたエレクトーンで作曲を学び、新人ミュージックコンクールの作曲部門に最年少でノミネートされる。年齢の枠を越え、大人と同じ土俵で審査される最終選考にジュニア作品が選ばれるのは、実に十二年ぶりのことだった。春香は本選の舞台を、心から楽しみにしていた。 しかし本選を目前にしたある日、春香は原因不明の激しい頭痛に襲われる。軽い体調不良かと思われたものの、病院で医師は首をかしげ、さらに詳しい検査をすることになる。その途中、春香の容体は急変し、彼女は意識を失ってしまう。目を覚ましたとき、すでに十日以上が経過していた。 医師から告げられたのは、長期入院と難病の可能性。コンクールへの出場は断念せざるを得ず、病状は次第に悪化していく。強い薬の影響で思うように身体も動かず、将来を夢見ていた音楽は遠ざかり、春香は少しずつ心を閉ざしていった。 そんなある日、春香は偶然「竹笛パンダ」という動画配信者を見つける。自然の中で竹笛を吹き、時には間違えながらも、心から楽しそうに演奏する中年の男性。その姿に春香は戸惑い、そして驚く。 ーー音楽は、間違えてはいけないものだと思っていたのに。 勇気を出してメッセージを送った春香は、竹笛パンダとの交流を通して、「音楽は正確さより、楽しむことが大切だ」という言葉に背中を押される。再び作曲に向き合う決意をし、タブレットを使って一曲の音楽を書き上げた。曲の名は「月夜の船」。 その曲を託された竹笛パンダは、春香の音楽を演奏し、動画として公開する。そこには、彼の演奏とともに、「ほしのパンダ」という春香をモデルにしたキャラクターが描かれていた。月夜の海を旅する幻想的な映像と、優しい旋律は、多くの人の心に静かに届いていく。 病室でその動画を見た春香は、涙を流しながら笑った。 ーー演奏できなくても、音楽はできる。 ーー自分の音は、誰かに届けられる。 春香は、次の作品に取りかかることを決める。 それは、自分自身の未来を重ねた、ひとつの『旅』の物語だった。

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カクヨム
カクヨム2026/06/27
  • 現在の作品ほしのパンダ ~ 音楽が紡いだ奇跡 ~