あらすじ
「火の一つも出せない魔導士に、ギルドの席はない」
魔力ゼロ――"最弱"と嘲笑され、王立魔術ギルドを追放された魔導士、ロイ・ハーヴェン。
だが彼は、絶望などしなかった。むしろ、心が躍った。
「これでようやく、誰にも邪魔されず、好きなだけ薬草の研究ができる」
ロイが持つのは、今では失われた学問〈魔導薬草学〉の知識。魔力に頼らず、植物の力と魔法陣の理を組み合わせて薬を生み出す技だ。
たどり着いたのは、王都から馬車で十日、薬草だけは豊かに茂る辺境のミルド村。荒れ地を耕し、一枚の葉を転がすように挽き、手間暇をかけて薬を作る。混ぜれば一瞬で最強の薬が完成――そんなチートは、彼にはない。あるのは、地道な手仕事と、確かな知識だけ。
老薬師の見立て、冒険者の古傷、子どもの夜の高熱。ロイの薬は、村人の暮らしを少しずつ癒していく。やがて寂れた村に、人が、笑顔が、戻りはじめた。
そんな折、隣村を襲う、原因不明の風土病。さらに――かつて彼を切り捨てた王立ギルドが、その特効薬の独占を狙い、家一軒分もの値をつけて村に圧力をかけてくる。
だがロイは、魔法で撃ち合ったりはしない。薬草の知識と、村人の連携と、安くてよく効く"本物"の薬で、静かに立ち向かう。
魔法は、使えない。けれど、手間と知識でつくる薬なら、誰にも負けない。
最弱と笑われた魔導士が、手仕事の薬で辺境の村をよみがえらせていく――どこまでも地道で、優しいスローライフ・ファンタジー。