あらすじ
人間には、人間の葬儀がある。
では ─── 妖怪には、誰が最期を見送るのだろう。
人里離れた山奥にひっそりと佇む一軒の葬儀屋、『 花守葬儀店 』。昼は固く戸を閉ざし、夜になるとだけ静かに明かりが灯るその店は、人間ではなく、妖怪たちだけが訪れる特別な場所だった。
店を営むのは、人間の青年・花守悠真。
代々「 妖怪専門の葬儀屋 」として受け継がれてきた花守家の四代目であり、妖怪たちの人生( 妖生 )の終わりを見届ける、ただ一人の葬儀師である。
鬼、雪女、河童、天狗、猫又、狐 ────、
長い時を生きた者も、誰かを守って命を落とした者も、人間に恐れられ討たれた者も、皆それぞれに語られなかった物語を抱えている。
悠真は故人の歩んだ日々を知り、遺された者たちの想いに耳を傾け、その妖怪に最もふさわしい一輪の花を選ぶ。
それは、死を悼むためだけの儀式ではない。
生きた証を残し、残された者が前を向くための、最後の贈り物。
一話ごとに、一体の妖怪が旅立ち、一輪の花が添えられる。
笑って逝く者もいれば、涙を流して消えていく者もいる。
そして悠真は、葬儀を終えるたび、一冊の「 送妖録 」に故人の名と、その生涯を書き記していく。
やがて彼は知ることになる。
妖怪たちを見送り続ける花守家が、この世とあの世の境界で担ってきた本当の役目を。
これは、人には語られることのなかった妖怪たちの最期と、その命に花を添え続ける一人の人間の、静かで優しい和風ファンタジーである。