あらすじ
桜渓学院高二の春、完璧な転入生・朝比奈蒼が現れた。
誰にでも穏やかで、誰からも好かれる。でも橘咲良だけは気づいていた。あの人の目は、笑っていない瞬間がある、と。
瀬戸川リアには、蒼に覚えのある記憶があった。七年前、父の裏切りを見た日に公園で飴をくれた男の子。失った温度の記憶。その人が、今ここにいる。
再会は、静かに始まった。
蒼はリアを「守る」と言わなかった。ただ隣にいた。ただ、いなくなりそうなものを、消した。
気づいたとき、リアの平穏は死体と破滅の上に築かれていた。
父の失脚。クラスメートの崩壊。ストーカーの廃人化。すべてが「リアのために」だった。
蒼の愛は本物だった。だからこそ、取り返しがつかなかった。
これは、愛した人が怪物になる話ではない。怪物が、愛することで完成する話だ。