あらすじ
桜渓学院に転入してきた朝比奈蒼は、完璧だった。
容姿、成績、立ち居振る舞い。誰に対しても穏やかで、自然と人が集まる。でも新聞部の橘咲良には、最初から違和感があった。善意に見えない善行。笑わない瞬間。目の奥の、静かな暗さ。
主人公の瀬戸川リアにとって、蒼は七年前に失った温度の記憶だった。幼い日に手を差し伸べてくれた、唯一の人。その再会が、すべての始まりだった。
蒼はリアを愛した。
だから世界を焼いた。
クラスメートの孤立工作、ストーカーの精神破壊、父親への社会的抹殺。すべては「リアが傷つかないように」だった。リアが知らない場所で、蒼の愛は静かに積み上がっていった。
これは救済の話ではない。
愛は人を救わない。でも、その人がすでに持っているものを完成させる。
蒼の中にあった「悪を滅ぼしたい衝動」は、リアへの愛によって焦点を得た。リアを愛するほど、怪物が完成に近づく。その構造を、蒼自身は最後まで自覚しなかった。
読者だけが、知っている。
「彼を愛してはいけない」と分かっていながら、それでもリアの愛を否定できない。そんな罪悪感を抱えたまま読み終える、ダークロマンスです。
リア視点の一人称、第四章後半のみ咲良視点の三人称を挿入。