あらすじ
気がつくと、わたしは見知らぬ世界の街道に立っていた。前の世界で、わたしは、ただの料理人。腕はあっても、居場所はなかった。
流しの料理人として旅を続け、辺境のマレ村へ向かう道で、行き倒れの行商人に出会う。三日、何も食べていないのに、空腹すぎて喉が食べ物を受けつけない――そんな彼に、わたしは、弱った胃にもすっと入る、滋味の粥を一杯。
一口、また一口。張りつめていた彼の肩から、力が抜けていく。
その様子を見ていた村の世話役の婆さまが、ぽつりと言った。「あんた……たいした料理人だね」。村のはずれには、何年も無人だった食堂が、ひとつ――。
包丁ひとつと、小さな鍋から始まる、辺境の食堂物語。説教でも魔法でもなく、手をかけた一皿で、村の困りごとを、ひとつずつ、ほどいていきます。
※毎日更新予定。