あらすじ
平成の夏、コミックマーケットの片隅で一冊の同人誌が売られた。
タイトルは『九頭竜』。作者はトオルという学生だった。
それを読んだ者は、例外なく瞳を失う。
人間の姿を保ちながら、人ではなくなる。
国は秘密の収容施設を建造し、被害者を隔離した。
しかし、原本は忽然と消失し、コピーさえも同じ現象を引き起こした。
トオルは失踪した。
家族が知らない「彼女たち」――虚空にしか姿を見せない、美しく永遠の女性たちが、彼の傍らにいた。
彼女たちの声だけが響き、トオルを支え、九頭竜の創作を加速させた。
霊能力者は発狂死し、高野山を中心とした結界が張られた。
トオルの血は扉を閉じ、だが令和に入り、新たな門が開き始めた。
九頭竜は、ただの呪いの本ではない。
それは門であり、鍵であり、トオルという存在を解き放つための触媒だった。
トオルは既に「その先」へ至り、世界中に散らばった自身の絵画を介して、再び姿を現す。
瞳を失う者、虚空に語りかける影、旧支配者たちの影。
四億年前から決められた運命が、今、動き始めている。
読む者は、決して油断してはならない。
この物語は、あなたの瞳をも蝕むかもしれない――。