あらすじ
亡国アストレア王国の第二皇子リオネルは、帝国の人質として帝都の宮殿に囚われていた。
礼儀正しく、目立たず、従順に見える十七歳の少年。しかし彼の魂には、外れスキルと呼ばれる特殊な権能が宿っていた。
その名は《号外》。
一日一回だけ、世界中に同一の紙片を出現させることができる。
ただし、書けるのは「真実」だけ。嘘も誇張も命令も書けない。
処刑台に連れられた七人の反逆者のうち、三人がすでに死んでいることを、リオネルは知っていた。
帝国は、死者を処刑しようとしていた。
一枚の紙が、空から降り注いだ。
そこから始まる。誰も命令していないのに、世界が勝手に燃え始める物語が。
冤罪を暴き、横領を晒し、捏造された開戦理由を世界に貼り出す。
リオネルはただ事実を出すだけだ。怒れとは言わない。立ち上がれとも言わない。
だが帝都の民は騒ぎ、前線の兵士は剣を置き、皇女は苦悩し、聖女は泣き、帝国は内側から崩れていく。
匿名の告発者、《黒紙卿》。
その正体は、皇帝の隣に立つ人質皇子だった。
真実しか書けない外れスキルで、帝国を焼く。