あらすじ
伯爵令嬢リリアーナは、十九歳で辺境伯グレイヴン・アシュクロフトのもとへ嫁いだ。
結婚式から三日後、夫は戦場へ消えた。
届く手紙は、月に一通。内容は毎回同じ、たった五文字。
『国境、異常なし。』
一年目は、待った。二年目は、領地を一人で動かすことを覚えた。三年目、リリアーナは鏡の前でようやく気づく。——私、いつまで待つの?
二十二歳の誕生日の夜、彼女は離婚状を書いた。
『三年間お疲れ様でした。ですが、もう離婚しましょう』
清々しかった。手紙を送り出した翌朝、人生で一番、空が広く見えた。
ところが、その一週間後。泥だらけの夫が、屋敷の門の前に立っていた。
「話を、聞いてほしい」
——どうして、今になって。
お茶の淹れ方も知らない。花の生け方も知らない。裁縫も料理も、壊滅的。そのくせ、嫉妬だけは一人前。三年間、ずっと妻の手紙を何度も読み返していた、不器用すぎる辺境伯と、もう次の人生を歩み始めていた元・健気な待ち妻が、今さら夫婦をやり直す——?
これは、順番が逆になった恋の話。