あらすじ
高天原を追われた嵐の神スサノオが降り立ったのは、川が腐り、毎年娘が一人ずつ喰われていく呪われた土地・出雲だった。
最後の生き残りの娘クシナダヒメは、助けを求めなかった。泣きもしなかった。「どうせ明日にはいなくなる人でしょう」と言い、死を待っていた。
スサノオは関わるつもりがなかった。通りすがりだ。ただ名前を聞いて「ありがとう」と言っただけだ。それだけで——嵐が、動いた。
八つの頭を持つ川の主ヤマタノオロチ。しかしそれは単なる怪物ではなく、かつて川を守ろうとして壊れた「誤った守護者」だった。スサノオは嵐で戦うたびに村を壊し、体に鱗が広がり、自分がオロチに近づいていく。
やがてクシナダヒメが奪われる。川底の宮殿で、核と呼ばれる最後の頭と二人きりで対峙する彼女は——怯えなかった。
「おまえと俺は同じだ」と核は問う。「何が違う」
嵐の神が「ありがとう」を本心から言えるようになるまでの、神話の恋と戦いの物語。
日本神話叙事詩シリーズ第二作(第一作『冥府記』から続けて読むとより深く楽しめますが、本作単独でも完結します)