あらすじ
合格祈願、恋愛成就、病気平癒、宝くじ、世界平和。天界には毎日、数十億件もの願いが届く。だが奇跡には"予算"があった。「今年は受験生が多いので恋愛枠を削ります」「台風対応で災害枠は使い切りました」——会議で枠を奪い合う神々を前に、新人神のハルは、全員を幸せにすることなどできないと思い知る。
それでもハルは、たったひとつの願いだけは叶えたかった。半分忘れられた小さな祠に、毎晩ひとりで飴を供え、手を合わせる八歳の少女・サキ。その祈りは、いつも同じ。『おかあさんのびょうきが、なおりますように』。けれど、病気平癒の予算は、もう、ない。
少女に正直に答えるなら、返事はたった一言。「神様、予算がありません」。——それでも本当に、神様にできることは、何もないのだろうか。奇跡の正体をめぐる、ひとつの夜の物語。