あらすじ
満月を挟む三晩だけ、死者のために扉を開く貸衣装店がある。
そこでドレスを借りた死者は、一夜限り、生者の夢を訪ねることができる。代金は、会いに行った相手との甘い記憶。記憶を失っても、愛されていた温もりだけは胸に残る。
閉店間際、ひとりの母親が店を訪れた。彼女が求めたのは、自分が着るためのドレスではない。幼くして亡くなった娘に着せるはずだった、月のように黄色い子供用のドレスだった。
しかし、この店の衣装が運べるのは生者の夢の中だけ。死者は死者に会うことができない。
叶わなかった約束を抱え、母親は誰もいないドレスと踊り始める。
その姿を見つめていた店主は、彼女に告げた。
「明日の夜、もう一度いらっしゃい」
※ミヤブリオに参加させていただくために書いた三題(ドレス/飴/月)噺です。