あらすじ
蒸気が文明の隅々まで行き渡る帝都ロンドン。
探偵ロイド・チェンバースは、相棒テイラーとともに、帝国最大級の新型飛行船群〈バハムート号〉の完成披露式へ警備要員として雇われる。
空中都市さながらの巨船を誇示するのは、派手好きで傲慢な資本家ブラウン侯爵と、その心臓部「超細密同期機構」を設計した若き天才ケイト・スミス博士だった。
ところが侯爵の思いつきで巨大なキリンが急遽搭載され、荷重計算も来賓動線も会見場所も直前に変更される。さらにスミスは、用途不明の資材「重い水」を追加発注していた。
初飛行は成功したかに見えた。しかしC区画の機関室で蒸気爆発が起こり、侯爵が死亡する。白い蒸気の中で、スミスが一瞬だけ微笑んだのを見たロイド訝し気に思いつつも、ドラゴンフライ航空から高額な事故調査を依頼される。
会社が望む結論は、船の欠陥ではなく「侯爵の気まぐれが招いた事故」だったのだ。しかし、ロイドは各ユニットに同時発生した同期異常、機関士の証言、重水の搬入記録、そしてドラゴンフライへの出資元である投資銀行に勤める姉マーガレットから得た侯爵とスミスの確執を追う。
やがて、水のある特性を利用し、バハムート全体の同期が意図的にずらされた可能性を突き止めるのだが――