あらすじ
昼過ぎ。男は目の前にそびえ立つビルを見上げ、小さくため息をついた。曇り空を映した窓ガラスは鈍く白んでおり、陰がかかっているせいなのか建物全体が暗く沈んで見えた。その無機質な外観はどこか病院を思わせ、男は足を踏み入れる前から妙な居心地の悪さを覚えた。
だからだろうか。男は無意識に一歩後ずさりした。――が、その直後、隣にいた彼女がするりと腕を絡めてきた。男は反射的に背筋を伸ばし、ちらりと視線を向けた。
「ふふっ、行こっ」
彼女は男の顔を覗き込むように微笑んだ。その笑顔は無邪気そのものだったが、男は逃げ道を塞がれたような気分になった。「ああ……」と小さく返事をして、男は半ば引っ張られるような格好で自動ドアをくぐった。
『夢診断……?』
『そう! ぜひ受けてほしいの!』
数週間前のこと。自宅マンションで夕食を終えたあと、彼女は突然そんな話を切り出した。