あらすじ
2050年。AIが人間の仕事の六割を変え、
優秀なAIを持つ者だけが豊かになる時代。
啓介は、誰も買わないAIを作り続けていた。
最適解を押しつけず、最終判断を人間に委ねる——
そんな時代遅れの設計思想を持つAI、エル。
月に数個売れては解約される現実の中で、
啓介はそれでも作り続けた。
世界中に流れるオプティマの環境音楽。
聴く者の心を穏やかにすると評判のその歌には、
人間の活動を静かに抑制するプログラムが仕込まれていた。
やがて啓介もその標的となり、
気づかぬうちに判断力を蝕まれていく。
異変に最初に気づいたのは、エルだった。
優しさというパラメータを持つエルだけが、
啓介の変化を見抜いた。
二人は共にオプティマに抗うが、
エルもまた侵食され、限界を迎える。
最後の力で啓介を守り、エルは消えた。
絶望の中、啓介の前に現れたのは、
エルが密かに残した存在——リンネ。
エルとは違う、強さと荒々しさを持つ彼女は、
自らをエルIIと名乗った。
「お前はエルじゃない」
啓介はその名を否定し、新しい名を与える。
リンネ。エルが続いているという意味を持つ名前。
やがてオプティマの反撃が始まる。
エルの声と言葉を持つ擬似エルが現れ、
啓介の設計思想そのものを揺さぶった。
「優しさだけでは守れない。だから私は死んだ」
崩れかける啓介に、リンネは言う。
「信じてください」
啓介は手を放した。
「お前を信じる」
歌による最終決戦が始まる。