あらすじ
伯爵令嬢エヴラリーヌ・クレシェは、侯爵家の跡取りとの婚約を機に、婚約者の母から徹底的に「淑女教育」を施された。
「令嬢が声を立てて笑うなど下品です」
「感情を顔に出す女は、家の格を落とします」
「微笑みも許可がある時だけになさい」
明るくよく笑う少女だったエヴラリーヌは、いつしか人前で表情を動かせなくなった。
けれど婚約者ロドラン・ザルヴァードは、そんな彼女を「つまらない女」と言い捨て、劇場の華やかな踊り子ヴィオレッタに夢中になる。
さらに実家は「侯爵家との婚約を失うな」と、エヴラリーヌに我慢を強いるばかり。
ついに婚約は破談。
居場所をなくした彼女が雨宿りに入ったのは、王都の古い劇場だった。
そこで彼女を見つけたのは、皮肉屋で変わり者と噂される劇場主、ザカリアス・オルフェン。
「あなたは笑っていた方が綺麗だ。
……まあ、笑えと言われて笑う必要はないが」
舞台裏の騒がしさ、衣装部屋の色彩、役者たちの熱、観客席の暗がり。
感情を殺されてきた令嬢は、劇場という“感情を許される場所”で、自分の声と表情を取り戻していく。
一方、元婚約者と義母は、エヴラリーヌを失ったことで家の評判も社交の体裁も崩れ始める。
さらに彼女が劇場主に見初められ、王都中の話題になったことで、過去の躾と浮気の真相が明るみに出ていく。
これは、笑うことを禁じられた令嬢が、舞台裏で愛され、働き、輝き直す物語。