あらすじ
夏祭りの夜、彼と二人で歩いた。
手は空いていなかった。
だから、触れないで歩けた。
それだけのことだった、はずだった。
川へ下りる坂で、彼が手を差し出した。
つかむ手ではなかった。
ただ、そこに置いてある手だった。
花火が鳴るたびに、指が一本ずつ重なった。
小指。薬指。中指。
どちらが先かは、わからなかった。
彼の手のひらは、思っていたより熱かった。
全部終わったとき、来たのは解放でも後悔でもなかった。
草の種を、ゴミ箱に捨てられなかった。
机の上に置いた。
翌朝、カーテンの隙間から夏の光が入ってきた。
(約4,100字/全19ページ)