あらすじ
雨上がりの街で、ライラ・フランネは一枚の紙片を拾う。
そこには、見覚えのある筆跡でこう書かれていた。
――備忘録 第七頁。
彼女はまだ、自分が何を忘れたのかを思い出していない。
ライラは、忘れられたものが淡い光として見える少女。
持ち主を忘れた鍵、呼ばれなくなった名前、誰にも読まれなくなった記録。
彼女はいつも、誰かが置き去りにしたものを見つけてしまう。
紙片の謎を追ってたどり着いたのは、石細工と水路の街アルカード。
西区画に関する記録は残っている。
税も、水利費も、住民票も。
けれど、人々はそこへ続く道を思い出せない。
旧記録院の奥で、ライラは知る。
かつてこの街には、もう一人の「ライラ・フランネ」がいたことを。
忘れられた名前を戻すことは、救いなのか。
それとも、今を生きる誰かのものまで奪ってしまうのか。
すべてを取り戻すことはできない。
それでも、消えかけたものを、なかったことにはしない。
忘れられたものが見える少女と、地図から消えた西区画をめぐる幻想ミステリ。