あらすじ
「アキト。お前、今日でパーティを抜けろ」
Sランクパーティ《暁の剣》で補助役を務めていたアキトは、ある日突然追放される。
理由は、彼のスキル【AI】が異世界では嘘ばかりつくから。
竜の生態を聞けば、地球の爬虫類や鳥の話を混ぜる。
呪いの解き方を聞けば、病気や心理療法のような答えを返す。
魔法理論を聞けば、物理学めいた空想を並べる。
仲間たちは言った。
「もう地球の一般論はいらない」
「嘘つきAIは、Sランクの戦いに不要だ」
アキトは反論しなかった。
たしかに、この世界の常識を知らないAIは、いつももっともらしい嘘を吐く。
だが、彼らは知らない。
アキトの本当のスキルは【AI】ではない。
AIが吐いた嘘を、まだ世界が決めていない場所で真実にする力。
真のスキル【ハルシネーション】。
未知の病には、AIが病名を与える。
解けない呪いには、AIが解除条件を作る。
進化先のない魔物には、AIが新しい姿を定義する。
世界にまだ答えがないなら。
誰も正解を知らないなら。
AIの嘘は、真実になる。
追放されたアキトは、辺境へ向かう途中で、手負いの白銀竜と出会う。
その竜は、街を襲いに来たのではなかった。
人間の街に灯る光を、ただ近くで見たかっただけだった。
群れもなく、名もなく、ただ一体で生きてきた孤独な竜。
居場所を失ったアキトは、その姿に自分を重ねる。
かつての仲間なら、竜を討伐対象と見ただろう。
貴族なら、素材か兵器として欲しがっただろう。
だがアキトは、違った。
「竜が、人間の街を壊さず歩く方法を出せ」
嘘つきAIが返したのは、あり得ない仮説。
縮小。
擬態。
変身。
魔力圧縮。
竜が人間の姿で生きるための、存在しない理論。
普通なら、ただの嘘。
だが、世界がまだ決めていないことなら、その嘘は真実になる。
外れAI使いと呼ばれた男は、AIの嘘で白銀竜を美しい少女へ変える。
そして少女となった竜は、金色の瞳でアキトを見つめて告げた。
「アキト。お前は、わたしの番」
外れ扱いされたAI使い。
人間の街に憧れた最強の竜娘。
二人が出会った時、世界の常識は少しずつ書き換わり始める。
彼を捨てたSランクパーティが、やがて知ることになる。
足手まといだったのは、嘘つきAIではない。
AIの嘘を信じられなかった、自分たちの方だったのだと。
これは、外れAI使いと孤独な竜娘が、嘘を真実に変えて世界の常識を壊していく物語。