あらすじ
婚約破棄の瞬間、ようやく思い出した。
ここは乙女ゲーム『セレスティア・ラブクロニクル』の世界。
そして私は、断罪され国外追放される悪役令嬢アメリア・ヴィルヘルミナ。
――気づくのが、遅すぎた。
王太子からの婚約破棄。
涙を流す“ヒロイン”ソフィア。
ざわめく貴族たち。
すべてが、知っている通りに進んでいく。
これはもう止められない結末だと、私は静かに受け入れた。
その時だった。
「彼女は、我が国へ連れて行く」
突然現れた銀髪の王子が、私の手を取る。
その場にいなかったはずの人物。
ゲームにも存在しない展開。
「……なぜ、私を?」
問いかけても、彼は答えない。
ただ静かに、まるで最初から知っていたかのように言う。
「君はここにいるべきではない」
そして続く言葉に、息が止まる。
「もう気づいているはずだ。自分のことも、この世界のことも」
――どうしてこの人は、そんなことを知っているの?
私は確かに、思い出したはずだった。
この世界が“物語”であることを。
だが、まだ何かが足りない。
彼だけが、すべてを見通しているようだった。
そして彼は、私の手を離さないまま告げる。
「君を、ここに置いていくわけにはいかない」
それは救いなのか、それとも——
これは、
断罪されるはずだった悪役令嬢が“思い出すのが遅すぎた”物語。
そして、
すべてを知っているようで何も語らない王子に、ただ連れ去られる物語。