あらすじ
前の人生では、過労で死んだ。
この人生では、無能と呼ばれた。
二度目の人生も、誰かの期待に応えるだけで終わるのか。
魔力が弱いという理由で、婚約を破棄された公爵令嬢。
彼女が屋敷から持ち出したのは、十五年分の杖の設計図だけだった。
辺境の小さな工房で、彼女は杖を削り始める。
その杖は、他のどんな杖とも違っていた。
魔力の量ではなく、内部の設計で魔法の精度を変える。
誰も知らないその理論で作られた杖を、たった一人の騎士が探していた。
三年前に手放した試作品が、ある男の命を救っていた。
無口で不器用なその騎士は、作り手を探すためだけに辺境まで来る。
けれど彼女の杖が注目されるほど、王国の杖を支配する男の影が近づく。
素材を止められ、資格を問われ、過去を晒される。
彼女にあるのは、前の人生で磨いた設計の目と、この手だけ。
その手が削る杖を信じる人は、どこかにいるのだろうか。