あらすじ

雪の匂いがする部屋。 村の決まりで鬼の許へ嫁いだ青年は、毎朝、吐く息の白さを数える。 鬼は無口で、彼に触れようともしない。 ただ、窓辺の凍った小さな蕾だけは、決して乱暴には扱わなかった。 それが、この冷え切った関係で唯一、熱を帯びた仕草だった。 青年は最初、それを気まぐれだと思った。 だが、自分が差し出す飯の湯気と、鬼が蕾を撫でる横顔が、いつしか同じ孤独の色に見え始める。 彼らは共に、まだ見ぬ春を待っている。 凍てつく山荘で、ひたすらに、けれど確かに。 この静かな待つ時間だけが、ゆっくりと彼らに感情を芽生えさせる。

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小説を読もう2026/06/26
  • 現在の作品春待つ鬼