あらすじ
王国の夜会で、侯爵令嬢カチュアは婚約者である第一騎士団長アレクから突然の婚約破棄を告げられる。
理由は、朝寝坊が好きで、読書が好きで、貴族令嬢らしく社交に励むより厨房でお菓子を焼くことを好むから。
けれどカチュアは泣かなかった。
「おめでとうございます、私に」
窮屈な婚約から解放されたカチュアは、追放同然に送られた辺境屋敷で自由な朝を迎える。
そんな彼女の前に現れたのは、冷静で誠実な侯爵ライナルト。彼は互いの自由を守るための“白い結婚”を提案する。
朝寝坊権、お菓子作りの自由、午後のお茶、読書時間、試食義務――細かな契約を交わし、カチュアはセレナード侯爵夫人となる。
最初は形だけの夫婦だったはずなのに、カチュアが焼くお菓子は冷えた侯爵邸を少しずつ温めていく。
やがて彼女は、小さな菓子店を守る平民の少女リリィと出会い、その才能を見出す。
《幸せのマドレーヌ》
《ただいま林檎ケーキ》
《胸を張るクッキー》
カチュアとリリィのお菓子は王都で評判となり、社交界、王国菓子大会、そして王宮へと甘い香りを広げていく。
一方、カチュアを捨てたアレクは、彼女が自由に輝き、王妃にまで認められていく姿を見て焦り始める。
かつて断罪された王宮の夜会で、今度はカチュアが胸を張って立つ。
苦い過去に甘さを足し、自分だけの幸せを焼き上げる、婚約破棄から始まる白い結婚とお菓子の逆転溺愛ファンタジー。