あらすじ
現代の市役所で防災を担当していた二条帆南は、豪雨対応の最中、永享十年の武蔵国西部へ転移する。
目の前にあったのは、避難所ではなく米蔵だった。
人を集めれば救える。
名簿を書けば支援できる。
道を示せば逃がせる。
そう信じていた帆南の常識は、戦乱前夜の村で次々と折られていく。
米蔵を開ければ、腹を抱えた人々が集まる。
名簿を書けば、人取りの目録になる。
逃げ道を地図にすれば、奪う者の道にもなる。
そして帆南が名乗った「二条帆南」という名は、この時代の者たちに「二條の名」として受け取られてしまう。
米を守るまつ。
名簿を閉じるしの。
道を捨てるたえ。
旗の下ではなく、旗の横に立つ佐内。
紙で人を救い、人を縛る妙蓮。
帆南は彼らの実務に敗れながら、この時代の危機管理を学んでいく。
守るべきは城ではない。
開けてはならない米蔵がある。
書いてはならない名がある。
残してはならない道がある。
これは、現代防災職員が戦乱前夜の村で、米蔵と名簿と自分の名を守ろうとする物語。