あらすじ

「紅く朱く赤い硝子玉だけが、この世に残された兄様なのです――」 今日、見知らぬ男の元へと嫁ぐ「わたくし」は、白無垢に身を包み、嫁入り道具の籠の奥に、ひとつの「宝物」を隠し持っていた。 それは、数年前に忽然と姿を消してしまった兄から戴いた、少し歪な赤いビィ玉。 産まれ付き足首のなかった兄。 家の中で隠され、誤魔化され、やがて不要とされて消えた兄。 そんな兄を誰よりも愛し、そして兄から誰よりも愛されていた。 「痛みは僕が引き受けたから」 かつて足首を痛めたわたくしの耳元で、優しく囁いてくれた兄の熱。 わたくしがこの家を去れば、兄がいた痕跡は世界から完全に消え去ってしまう。 婚礼の刻が近づくなか、わたくしは籠の奥の「兄様」をそっと愛撫する。 叶わぬ恋情と、決して消えない血の匂いを、白無垢のなかに閉じ込めて。 これは、ある名家の婚礼の裏で、一人の少女が抱き続ける、美しくも罪深き「追憶」の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/06/25
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