あらすじ

『異世界に飛ばされた神だけど、誰も俺が神だと信じてくれない。』  私は、創世神だ。  私の主な業務は世界の創造、輪廻の管理、そして下位部署の事務的な不手際によってマルチバースが崩壊せぬよう、全知のデータベースを保守することであった。  しかし、ある日――。  極限まで過労が祟った一介の事務神のミスと、本来ならば決して触れてはならぬ「一括自動処理術式」の赤いボタンが肉体の生存本能(反射)によって叩かれたことで、私は全く見知らぬ別の世界線へと放り出されてしまった。  実務上の最大の問題は、私が神としての全能の魔力や創世の権能を一時的にアクセス拒絶(ロック)されたことではない。  この新たな生存の舞台において、私の提示する客観的なファクト(事実)を、誰一人として「真実」として受容してくれない点にあった。 「私は、この宇宙の法則を敷設した創世神だ」 「ハハハ! 傑作だ! 食い逃げの言い訳にしちゃあ、ここ数年で一番のクオリティだぜ!」 「私は過去四十億年にわたり、全マルチバースの運行管理を統統括していた経験がある」 「へえ、そりゃあ随分とクリエイティブで大層な職歴をお持ちで」 「私は至って生真面目に、嘘偽りのない厳然たる事実を述べているのだが」 「ああ、分かった分かった。おう、その大真面目な顔がまた最高に面白いぜ」  貨幣:ゼロ。  住居:ゼロ。  身分証明:ゼロ。  そして私が真実を出力するたびに、この世界の知的生命体は、それを「洗練された質の高いジョーク」として都合よく処理する非論理的な認知エラー(誤解)を発生させる。  辺境の小さな開拓村に漂着した、ただ腹を満たして静かに暮らしたいだけの元最高神。そんな彼が直面した、生存戦略上の最大にして最凶のバグ――それこそが「人間」という不完全な存在であった。  これは、徹底的に生真面目で嘘のつけない神と、完璧な論理のすれ違いによって勝手に自滅していく人間たちを巡る、事務処理系ファンタジーコメディである。  なぜなら、時に純度百パーセントの真実を提示することこそが、この世界において「最も巨大な誤解」を爆発させる、最速の起動コマンド(キックオフ)なのだから。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/06/25
  • 現在の作品『異世界に飛ばされた神だけど、誰も俺が神だと信じてくれない』