あらすじ
王立学院の卒業記念パーティーで、第二王子アルバート・フォン・リードリヒは婚約者であるクラリス・ヴァレンタイン公爵令嬢を大勢の貴族たちの前に呼び出し、平民出身の聖女ミレーヌへの数々の嫌がらせを理由に婚約破棄を宣言する。
社交界で「悪役令嬢」と噂されていたクラリスは、涙を見せるどころか「ありがとうございます」と穏やかに受け入れ、そのまま会場を去る。誰もが彼女の敗北だと思ったその瞬間、事態は一変する。
実は婚約破棄騒動そのものが、王立監察院による大規模な汚職捜査のための偽装工作だったのだ。
無能で頼りないと見られていた王子アルバートは監察院第三特務室の主席監査官。いじめられていたはずの聖女ミレーヌは潜入捜査官。そして悪役令嬢と呼ばれていたクラリスこそ、公爵家の内部から証拠を集め続けた内部告発者だった。
婚約解消によって利益相反の問題を解消したアルバートは、その場でクラリスの父であるヴァレンタイン公爵と宰相ゴドフリーを、王室財務横領および国家反逆の容疑で拘束。半年に及ぶ捜査によって集められた膨大な証拠が明かされる。
すべてが終わった後、クラリスは王立監察院第三特務室の主任会計官として新たな任務へ向かう。婚約破棄された悲劇の令嬢でも、復讐に燃える悪役令嬢でもなく、一人の優秀な官僚として――。
これは、婚約破棄から始まる恋愛劇ではなく、王国の闇に立ち向かう監察官たちの痛快な捜査劇である。