あらすじ
1941年12月。
太平洋戦争が始まる。日本軍は各地で勝利を重ねるが、中国戦線は泥沼化し、戦局は長期消耗戦に向かうはずだった。
だが、その歴史は突然ねじ曲がる。
皇居の奥深く、限られた者しか知らぬ場所に座す“それ”は、人も兵器も国家も区別しない。
自らにとっての“障害”を無効化し、海を従え、都市も軍隊も痕跡ひとつ残さず消し去る終末存在。
最初は日本軍の戦いを眺めていた“それ”は、やがて苛立つ。
「なぜ本丸を潰さず、周辺で勝って喜んでいるのか」
そして出陣する。
たった二日。
中国戦線は敵味方まとめて消滅し、続いてアメリカ本土は崩壊。
ロサンゼルスもワシントンもニューヨークも、毛一本残さず消えた。
昭和天皇は勝利宣言を読み上げる。
後ろには大本営の軍首脳たち。
国民は「皇軍の猛攻による歴史的大勝利」と信じ、熱狂する。
だが、真実を知る一握りの者たちは震えていた。
日本は勝ったのではない。
終末の神に、勝たせてもらっただけなのだ。
世界は大日本帝国の支配下に入る。
反乱を起こした国は消され、反乱軍だけが跡形もなく消滅するたび、人々はそれを「天罰」と呼ぶようになる。
忠誠は恐怖となり、恐怖はやがて信仰へ変わっていく。
そして帝国の頂点にある昭和天皇すら知っていた。
自分は世界の支配者ではない。
玉座の奥にいる“それ”の代弁者にすぎないのだと。