あらすじ
消えたい、と願った夜に、消えない人と出会った。
[時空SF恋愛/ヒューマンドラマ/切ない]
※毒親・自己否定・虐待など、重いテーマを含みます。
かわいい題名のわりに、けっこう、痛い話です。
それでも最後は、ちゃんと牛乳を買いに行ける場所まで連れていきます。
──眠れない夜に、洗面所の灯りを、ぱちん、と消す。
その瞬間、自分まで、すっと消えてしまえたら。
そんなふうに思ったこと、一度くらい、ありませんか。
「消えたい」と願った夜、十六歳の朝倉美緒は、洗面所のスイッチを押した。
気づけばそこは、割れたティーカップが敷きつめられた、行き場のない子どもたちの心が繋がる“還れない部屋”。
壁から滲み出す親の怒声に襲われた美緒を救ったのは、櫂と名乗る青年だった。
彼は、迷いこんだ子を出口へ送り続ける“渡し守”。
そして――三十年前にこの部屋へ消えたまま、ひとり年を取れずにいる、行方不明者だった。
先輩魔女・レイたちと手を繋ぎ、互いの「いちばん見たくない部屋」を越えていく少女たち。
痛みを半分こするたび、美緒は強くなり、櫂に惹かれていく。
けれど、現実へ還る唯一の方法は、最深部のブレーカーを落とすこと。
落とせば美緒は自分の“今”へ帰り、櫂はまた、誰もいない部屋に取り残される。
二人の時間は、三十年、ずれている。決して、交わらない。
それでも美緒は、自分の足で生きるために。
そして、いつか櫂を連れ戻すために、消灯のスイッチへ手を伸ばす――。
箒も魔法もない。“魔女”とは、こちら側のルールに従わず、手を繋いで生き延びようとする少女たちのこと。
家に居場所のなかった子どもたちの連帯と、時空を超えた、ひとつの恋。
「いい子」をやめた女の子が、自分の声を取り戻すまでの物語です。