あらすじ
十年ぶりに日本へ帰ってきた佐伯蓮司は、異世界で魔王を討伐した元勇者だった。
だが、帰還した日本は、彼の知る平和な世界ではなかった。街には武装した《ハンター》が行き交い、世界中には《ダンジョン》が出現し、モンスターを倒して素材や魔石を換金することが一大産業になっていた。
そして何より、蓮司の家族は壊れかけていた。
父はすでに亡くなり、母は生活費と医療費のために働き詰め。妹の美羽は、体内の魔力に身体が耐えられなくなる現代病《過敏魔力症候群》で入院していた。
世界を救ったところで、家族を救えなければ意味がない。
そう決意した蓮司は、妹の薬代を稼ぐため、仮免許の新人ハンターとして政府管理ダンジョンへ潜る。だが初配信中、本来いるはずのないB級魔物と遭遇。視聴者が「逃げろ」と叫ぶ中、蓮司は素手でそれを倒してしまう。
B級魔物を武器なしで倒せるのは、通常ならS級ハンター級だけ。
SNSと掲示板では「国家戦力級の新人」「妹の薬代兄貴」と大騒ぎになるが、本人はそんなことを気にせず、妹に少し高いプリンを買って病院へ向かっていた。
聖剣はない。
本来の力も戻っていない。
現代日本の常識も、まだよくわからない。
それでも蓮司は決めている。
今度こそ、家族の日常だけは守り抜くと。
これは、世界を救った元勇者が、現代ダンジョンで無自覚に国家戦力級として騒がれながら、崩壊寸前の家族を立て直していく物語。