あらすじ
文明が崩壊して、百年以上が経った。
草と蔦に飲み込まれた廃墟の街を、十代の少女アカリは一人で旅している。理由は、ほんの少しの好奇心——世界がこうなったわけを、知りたかった。
旅の途中で辿り着いた廃駅に、一匹の猫がいた。灰色のハチワレ。長いあいだそこにいた、と言う。なぜかは言わない。
アカリは猫に名前をつけた。ハッサク。理由はなんとなく。翌朝、ハッサクはアカリについてきた。理由は、気が向いたから。
こうして、ひとりと一匹の旅が始まった。
行商人、図書館の番人、祭りを続ける老夫婦、地図を作る男——旅の先々で出会う人たちは、それぞれの場所で、それぞれの日常を生きていた。崩壊した世界に慣れて、嘆かず、騒がず、ただ今日を過ごしていた。
ハッサクはアカリを観察しながら旅をする。この人間の感情は読める。でも、名前のつけられない感情が、少しずつ増えていく。
アカリが探している答えは、案外近くにあるかもしれない。でも、それはまだ、誰も知らない。