あらすじ
誰も死ななかった。
だから、誰も俺を評価しなかった。
「攻撃魔法も使えない魔術師なんて足手まといだ」
そう言われ、冒険者パーティー《双星の剣》を追放された魔術師アダール。
だが彼には、誰も理解できない才能があった。
敵の動きを読み、選択肢を奪い、味方を絶対に死なせない。
派手な火炎魔法も雷撃もない。
泥を作り、霧を流し、地形を少し変えるだけ。
それだけで敵は自分から不利な道を選び、味方は傷一つ負わずに勝利していた。
三年間、パーティーの死者はゼロ。
しかし仲間たちは、その価値に最後まで気付かなかった。
街を去ろうとした彼の前に現れたのは、天才薬師ヴィオラ。
「あなたは無能なんかじゃありません」
初めて自分の仕事を理解してくれた彼女とともに、アダールは新たな一歩を踏み出す。
目指すのは英雄ではない。
冒険者パーティー、商会、領地、そして国家にまで「誰も死なない仕組み」を売る専門家集団だ。
戦わないから儲かる。
事故が起きないから信用される。
死者が出ないから、また依頼が来る。
評価されなかった皮肉屋の魔術師と、患者を減らしたい変わり者の薬師。
そんな二人が出会ったとき、常識だけを信じる者たちは、自分たちが何を失ったのかを少しずつ思い知っていく。
これは、敵を倒す英雄の物語ではない。
英雄が最後まで生きて帰れる戦場を作り続けた、一人の青年と一人の少女が、世界を書き換えていく物語。