あらすじ
新婚初夜、体を重ねたあと、俺の花嫁である白石凛はホテルのスイートルームのベッドに横たわったまま、しばらく天井を見つめていた。
窓の外には東京・港区の夜景が広がり、ガラスには彼女の白い肩の線と、枕元に置かれた萎れかけの白い薔薇が映っていた。
疲れているだけだと思った俺は、彼女を抱き寄せようと手を伸ばしたが、その瞬間、背筋が凍るような言葉を聞いた。
「佐伯悠真、私はもう、あなたが思っているような女じゃないの。気づいていた?」
腰に回していた俺の手が、そのまま固まった。
一瞬、頭の中が真っ白になったが、それでも俺は本能的に、過去なんて気にしない、古い価値観で俺たちの未来を測るつもりはない、と伝えようとした。
けれど凛は横を向いて俺を見つめ、その目には後ろめたさも動揺もなく、ただ得体の知れない冷たさだけがあった。
「久我晴臣よ。三日前、私から会いに行ったの。私から誘った。これからも、彼とは切るつもりはないわ」
俺は彼女を見つめたまま、胸を乱暴に引き裂かれたような痛みに襲われた。