あらすじ

幽霊や虫、高い所が苦手なように、月が苦手だった。 何もない長閑な田舎の村。珠依にとって、近所の竹林の奥に暮らす作家が書く、毎月一日に発売される文藝雑誌の連載小説『月の路』を読むことは楽しみであり、六年間で染みついた習慣であった。 その作家・霧生響は、変わり者。煙草ではなく煙管を好み、黒い羽織を着る。珠依が赤ん坊の頃から十八年――小皺ひとつ、白髪の一本さえ増えない、変わらぬ二十代のような美しい容姿。時折光る金色の目――。 口は悪いけれど、どこか優しい。兄のようなその存在に、淡い心を密かに抱いていた。 高校の卒業式の朝――珠依の十八歳の誕生日、そして『月の路』が最終回の日。古びたノートの山を残し、霧生は何も告げず忽然と姿を消す。 そこに綴られていたのは、千三百年の時を越えた、ひとつの祈りだった。 月を、恐れていたのは——なぜ。

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小説を読もう2026/06/24
  • 現在の作品月の柵(ませ)