あらすじ

母の葬儀の日、五十二歳の私は二十年ぶりに実家へ戻った。 母とは長く不仲だった。 私は母に愛された記憶がない。 ところが葬儀の帰り、雨粒が母の声で謝り始める。 「ごめんね」 「あなたを、娘だと思えなかった」 「でも、娘じゃなかったから愛せなかったんじゃない」 「愛してしまったから、罰を受けていたの」 父が隠していた古い新聞記事には、四十五年前の水難事故が載っていた。 大雨の日、川に流された二人の少女。 助かった一人と、行方不明になった一人。 行方不明になった少女の名は、雨宮沙和子。 私の名前だった。 私は本当は、隣家の娘・佐伯美雨だった。 母は実の娘を失い、助けた他人の子を「沙和子」として育てた。 だから私を抱きしめなかった。 愛していなかったからではない。 愛してしまう自分を、母自身が許せなかったからだ。 そして雨が最後に告げた真実は、さらに残酷だった。 本物の沙和子は、母に見捨てられたのではない。 私を助けようとして、自分の手を離したのだった。

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エブリスタ2026/06/23
  • 現在の作品雨粒のひとつひとつが、母の声で謝ってくる