あらすじ
「私のこと好きなんじゃなくて、嫌われないようにしてるだけでしょ」
恋人にそう告げられる。
この事がきっかけで嫌われるのが余計に怖くなる。
受容性が人一倍強い神倉シンは人間不信気味になってしまう。
人と関わる事の少ない山奥の小屋に逃げるように一人暮らすようになった。
薪を割り、水を汲み、米を炊く。
誰にも合わせず、誰にも期待されない生活。
それだけで、十分満足だった。
ある日、生活用品を買うため、数か月ぶりに街へ下りる。
街は、記憶と同じ形をしていた。
信号は動き、店は開き、人は歩いている。
けれど、誰もシンの顔を見ない。
喉を、手首を、傷口を、確認するように見る。
そんな街で、白い服の女だけがシンの目を見た。
「山から来たの?」
彼女の名前は、吉澤奈々香。
優しく、静かで、少しだけ距離の近い女だった。
シンは菜々香の事を信用出来ない。
だが奈々香はシンの言葉を覚えていた。
傷を見つけ、心配し、手を繋ぎ、少しずつシンの生活に入り込んでくる。
少しシンの心が動く…
だが、彼はまだ気づいていなかった…