あらすじ
帝国軍戦略機動師団長、ヴィクトリア・フォン・アイゼンベルク大佐。
のちに“帝国の黒鷹”と呼ばれる彼女は、国家戦略級術師として戦場に投入され、幾度となく帝国の危機を支えた。
これは、その前日譚である。
名門アイゼンベルク公爵家の娘として生まれたヴィクトリアは、帝立軍官学院に在籍しながら、すでに軍人としての道を歩み始めていた。
家格、軍規、年次序列、候補生たちの視線。
学院という閉じた秩序の中で、彼女はまだ若い候補生でありながら、周囲から明らかに異質な存在として見られていく。
派手な勝利を求めない。
撃破数に酔わない。
必要以上に敵を追わない。
通信を残し、損耗を抑え、任務達成に必要なものだけを切る。
その判断は、候補生のものではなかった。
だが、英雄のものでもなかった。
帝国が後に“黒鷹”と呼ぶ兵器の輪郭は、すでにこの頃から静かに記録されていた。
これは、若きヴィクトリア・フォン・アイゼンベルクが、帝国軍の中で何を見られ、何を恐れられ、何を期待されていったのかを描く外伝。
未来の大佐。
未来の師団長。
未来の国家戦略級術師。
その名が、まだ学院の記録用紙に収まっていた頃の物語。