あらすじ
ある日、人類は「人生で一度だけ時間を戻せる」という仕組みを手にする。しかしそれは単なるやり直しではなく、選んだ瞬間に世界が分岐し、選ばれなかった可能性が静かに残り続けるものだった。
主人公はその力を知りながらも使えずにいた。明確な後悔もないはずなのに、胸の奥には説明のつかない空白があったからだ。だがある雨の日、その空白が強く疼き、主人公はついに過去へ戻る選択をする。
そこで出会った“誰か”は、確かに知っている存在でありながら、世界の中で徐々に認識から外れていくような違和感を持っていた。そして主人公は、自分が過去をやり直したのではなく、ひとつの選択によって世界を分岐させてしまったことを知る。
選ばれた側と選ばれなかった側。どちらも現実でありながら、どちらも完全ではない世界の中で、主人公は「何を残し、何を消したのか」という問いに向き合うことになる。
やがて明らかになるのは、時間を戻すという行為が救いではなく、分岐を増やし続ける選択そのものであるという事実だった。
そして最後に主人公は、静かに一つの決断をする。
その選択の先に残ったのは、確かな結末ではなく、まだどこかで続いている雨の気配だった。