あらすじ
「あなたを処刑台へ送ったのは、私です」
「あなたの魂を消したのは、私」
「あなたを売った代価で、私は生き延びました」
死者が最期に伝えられなかった言葉は、青い封蝋の手紙――〈遺言便〉となって現世へ届く。
その手紙を遺族や友人へ届ける遺言配達人カイのもとに、ある日、百日後の消印が押された四通の遺言便が届いた。
差出人は、カイと、今も彼の隣にいる三人の仲間たち。
騎士アデルは、未来の自分がカイの処刑命令へ署名する瞬間を見た。
魂術研究者ノアは、自分の手でカイの魂を消し去る感触を知った。
商家令嬢ミレーユは、彼の居場所を売った代価を受け取っていた。
そして、未来のカイが遺した手紙には、三人を責める言葉ではなく、こう記されていた。
「彼女たちを止めるな。これは俺が選んだ。俺を死なせろ」
四通の遺言便が本物なら、百日後には四人とも死んでいる。
その事実を知ったカイが最初に口にしたのは、自分の死への恐怖ではなかった。
「よかった。少なくとも三人とも、百日後までは生きてる」
その一言で、三人の心は決定的に曇った。
アデルは、カイを守るために彼の自由を奪う。
ノアは、未来を覆すために禁じられた魂の実験へ踏み込む。
ミレーユは、彼を失わないために借金も職場も逃げ道も買い取っていく。
そこへ、未来の遺言便を回収しようとする中央遺言局が現れた。
アデルは剣を抜き、ノアは四通の手紙を盗み、ミレーユは郵便支局そのものを買収する。
三人とも相談はしていない。
それでも、カイを引き渡すという選択だけは、最初から存在しなかった。
百日後の全滅を覆すため、四人は死者の手紙を届けながら、自分たちを殺した未来を追う。
これは、相手を守ろうとするほど相手の意思を奪ってしまう四人が、百日の逃亡と配達の果てに、初めて「一緒に生きたい」と言えるようになるまでの物語。