あらすじ
「特発性疾患」、その言葉は医療において原因不明を意味する。
救急外来では、腹痛は胃腸炎になり、しびれはストレスになり、説明できない症状は「様子を見ましょう」の一言で片付けられていく。医学は統計でできている。蹄の音が聞こえたら、まず馬を疑う。それは正しい。だが、一万頭の馬の中に一頭だけシマウマが紛れていたら?
医師でもない偏屈な男子高校生・神谷悠真は、人の感情には興味を示さない。目の前で患者が急変しても、彼が考えるのは「診断のどこが間違っていたのか」だけ。歩き方、靴紐、爪の線、服の皺、机に置かれた薬袋。誰も気に留めない違和感を拾い集め、常識の向こう側に潜む希少疾患〈シマウマ〉を暴き出していく。
そんな彼を最も嫌っているのは、総合内科医・白石玲奈。患者に寄り添い、経験を信じ、現場で戦い続ける彼女にとって、人間より謎を優先する悠真は最低の存在だった。それでも何度否定しても、彼の診断だけは外れない。
診断とは推理であり、誤診とは思い込みが生んだ密室である。救急外来に運ばれる一人の患者、誰もが見落とす小さな違和感、そして統計の影に隠れた一頭のシマウマ。二人は衝突を繰り返しながら、現代医療が見過ごした希少疾患の真実へたどり着いていく。
これは、人を救いたい医師と、謎を解きたい高校生が、世界で最も難しい犯人捜しに挑む医療ミステリー。