あらすじ
世界は、緩やかに「熱的死(冷え切った静止)」へと向かっていた。
超対称魔法――かつて「奇跡」と呼ばれた無限のエネルギーが消失して二百年。
世界のルールは、鉄と蒸気、そして不可逆な「等価交換(エントロピー)」に支配されていた。
鉄錆と石炭塵が降る炭鉱都市ルドラ。
しがない錬金術師の少年レオンは、地下深部での崩落事故の最奥で、
絶対零度の結晶に封印された銀髪の少女――シアを起動させてしまう。
「――マスター。排除プロトコルを起動しますか?」
彼女の正体は、旧時代に作られた冷徹な生体魔導兵器『アルケミスト・デバイス』。
世界の物理定数をハッキングする圧倒的な『奇跡』を放つ彼女だったが、
その起動システムには、致命的な「仕様」が組み込まれていた。
『彼女が奇跡(魔法)を紡ぐたび、お前の生命(熱量)が等価交換として削り取られる』
片方を救えば、片方が死ぬ。
閉じたシステムが提示する、残酷なデッドロック。
「そんな不条理な算数(等価交換)、僕たちが叩き壊してやる!」
これは、誰かを切り捨てる世界の方程式に抗い、
失われた世界の熱量を再び錬成するために、
手を繋ぎ合って荒野を征く、少年と少女の「未完成な螺旋」の物語。
――僕たちの鼓動(バイナリ)が重なる時、死にかけた世界に新たな残光が灯る。