あらすじ
かつて王国騎士団直属歌術隊に所属していた歌魔術師《うたまじゅつし》リシアは、戦争が終わった今も、自分の歌を信じきれずにいた。
彼女の歌は、多くの騎士たちを励まし、絶望の中で立ち上がる力を与えた。
しかし同時に、その歌に背中を押されて戦場へ向かい、帰らなかった者たちもいる。
幼なじみのアイシャも、その一人だった。
歌は、本当に人を救えるのだろうか。
答えを探すため、リシアは銀色のリス・シルと共に旅に出る。
彼女には、人の本音や後悔、願いを“心歌”として聞き取り、その想いを歌詞へ変える特別な力があった。
夢を諦めた鍛冶師。
声を失った少女。
希望を背負わされた勇者。
歌を憎む女。
人間と共に生きたい魔族。
各地で出会う人々の痛みに触れ、リシアは歌術師《かじゅつし》として事件の核心へ踏み込んでいく。
けれど、歌は万能ではない。
時に届かず、時に拒まれ、時に善意が誰かを追い詰めることもある。
それでもリシアは、人の想いを聞き続ける。
歌う勇気と、歌わない勇気を学びながら。
やがて彼女が旅の中で集める歌詞は、かつて世界から失われた伝説の歌《星詠みの歌》へと繋がっていく。
そして、歌を封じようとする黒譜の民、現代の勇者レオン、死んだはずの幼なじみアイシャの影が、リシアの旅に深く関わり始める。
これは、世界を剣で救う物語ではない。
誰かの心に残った小さな想いを、歌として未来へ渡す物語。
そして、一人の歌魔術師が「歌は人を救えるのか」という問いに向き合い続ける旅の物語である。