あらすじ

年末表彰会の日、関東共栄銀行・新宿第三支店の会議室は、いつになく華やかに飾りつけられていた。入口から壇上まで赤いカーペットが敷かれ、壁には「年間優秀社員表彰会」と書かれた横断幕が掛けられている。支店の全社員は正装で席に着き、支店長の桐谷翔吾が自ら賞を授与するのを待っていた。  最初のいくつかの賞が発表されると、会議室には絶えず拍手が響いた。 「橘莉奈、最優秀預金獲得賞!」 「杉本拓也、最優秀融資業務賞!」  受賞者の首に表彰タスキが掛けられるたびに、客席からは拍手と歓声が上がり、口笛まで聞こえた。橘莉奈は封筒と最新型のスマートフォンを抱え、目を細めて笑っている。杉本拓也は賞品を掲げ、まるで支店の英雄にでもなったようだった。  司会者が私の名前を読み上げた瞬間、場内の熱気はぴたりと止まった。 「佐倉真央……」  司会者の声は明らかにそこで詰まった。彼は桐谷翔吾の顔を見た。続きを本当に口にしていいのか、判断に迷っているようだった。  桐谷翔吾は苛立った様子で司会者からマイクを奪い取ると、壇上に立ち、冷たい笑みを浮かべた。 「佐倉真央。本年度のKPIはすべてゼロです」 「収益面、リスク面、個人営業、法人営業、どの評価項目から見ても、彼女は本支店における本年度最下位の社員です」  そう言い終えると、彼はゆっくりとビニール手袋をはめた。  食堂の田中さんが壇の脇に立ち、顔を青ざめさせながら、ビニール袋で何重にも包まれたものを差し出した。桐谷翔吾がそれを受け取り、袋を破った瞬間、鼻を突く生臭い悪臭が一気に広がった。  それは、処理されていない豚の大腸だった。  太く長く、表面には脂がぬらぬらと光り、汚れも十分には落とされていなかった。それが取り出された途端、壇に近い社員たちは慌てて鼻を押さえた。後ろの席からは、こらえきれない笑い声が漏れた。  桐谷翔吾はその豚の大腸を、本物の表彰タスキのように掲げた。 「さあ、佐倉真央」 「今年の実績がゼロなら、君に一番ふさわしい表彰タスキを贈ってあげよう。しっかり反省材料にするといい」  客席から、押し殺しきれない嘲笑が起こった。その豚の大腸が私の首に触れようとした瞬間、私は桐谷翔吾の手首をつかみ、その力を利用してひねり上げた。彼が痛みに口を開けた一瞬、私は一番太く、一番汚れの残った先端を、その口の中に押し込んだ。 「支店長、口がずいぶん臭いますね」 「これで歯でも磨いてください」

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カクヨム
カクヨム2026/06/22
  • 現在の作品支店長が豚の大腸を表彰タスキにして私を晒し者にした結果、私は彼の直属上司になりました