あらすじ

朝、目覚めたとき、 榊晃は「何かを失った」という感覚だけを覚えていた。 理由は思い出せない。 名前も、顔も、何も残っていない。 ただ、その空白だけが、はっきりとそこにあった。   同じ日、同じ街で。 彼は一人の女性と出会う。 ――白石梓。 初対面のはずだった。   だが、彼女といると、 妙に呼吸が合う。 同じ言葉を、同時に口にする。 同じものを、迷いなく選ぶ。 理由はない。 記憶もない。 それでも、どこかで「知っている」感覚だけが残っている。   「ねえ、これって偶然だと思う?」 彼女はそう言って笑う。   偶然では説明できないほど自然で、 しかし説明できる理由はどこにもない関係。   やがて二人は気づき始める。 何かを思い出しそうになるたびに、 この“今”が壊れてしまう気がすることに。 だから彼らは選ぶ。 すべてを知ることではなく、 何も知らないままでいることを。   それでも――  触れた温もりや、  ふとした瞬間に重なる呼吸だけは、  どうしても消えないまま残っていた。   これは、 「愛を失った後」に残るものの物語。  そして――  記憶も理由もないまま、  人がもう一度誰かを選んでしまう、その瞬間の記録である。

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カクヨム
カクヨム2026/06/22
  • 現在の作品After the Loop ―君の名前を忘れた朝―(日/Eng版)